ハタチノ 大木温之

先月号の音人のハタチノです。打ちっぱなしなので、誤字脱字はご了承ください。


音楽と人 2007年5月号
ハタチノ 第62回 【大木温之 The ピーズ


駒澤大学にまだ通っていたハタチの頃 いい人たちばっかりに出会えたなぁ

ハタチは22年ぐらい前で、大学生。田舎にいてもしょうがないから東京に行くための言い訳で、たまたま駒澤大学に受かったからね。ピーズっていう自分のバンドはまだやってないけど、ちょうど友達のバンドを手伝ったりとかするようになった頃だな。
自分のバンドは、作りたいっていうか、昔から曲作るのは好きだったんだけど、作った曲を他の人に唄ってもらったら、そいつが結構ヘタクソでさ、リズムとかメロディーとかおかしくなっちゃって。だったら自分の曲は自分でやったほうがまだ悔しくなくていいなあと思って。ホントは自分で唄ったりとかは恥かしいからイヤだったんだけど、でも結局自分でやるしかねえなあってことになったんだよね。
曲作るのが好きって言っても別に俺の中では4番目くらいだよ? やっぱセックスとか酒呑んだりとか麻雀やったりとかのほうが好きだよね。楽器は中学校くらいの頃からチャカチャカ遊んでたけど、田舎は麻雀とキャロルくらいしかないからさ。やること他にないんだよ、お酒もまだ呑めないし、オートバイとかもなかったしね。今だって音楽やってるっていう感覚もないしさ、やることないからやってるだけで。
今回のこの取材で、「ハタチの頃の写真持ってきてください」って言われてさ、いろいろ昔の写真見てたら、そのころ出会った人たちって結構みんないい人たちばっかりだったんだなあって思ったな。大学の先輩、音楽の先輩たち、ライブハウスで初めて会った人たちとか、すごく優しくしてくれてたんだなあって。だからなんか、可愛がられたかったんだなあ、俺も。やっぱ高校のときとは、明らかに違ったよね。曲作りだって田舎のコード進行はキャロルだからね! 駒澤はデュラン・デュランとかが流行ってたころだから(笑)。やっぱビートルズとか永ちゃんだけじゃないんだよね! そういう今まで聴いたことのない音楽を聴いてきた人たちと、いろいろ知り合えたから大学の2年間くらいは良かったな。
その頃は、世田谷の若林でトモ(トモフスキー/大木知之。実弟)と一緒に住んでても麻雀やるときぐらいしか顔合わせないし、兄弟で音楽の話なんかしないけど。っちゅうか、俺とシンちゃんとアビさんが集まったって音楽の話なんかしないしさ(笑)。ましてや兄弟で音楽の話なんか気持ち悪い(笑)。一緒にやるなんて思ったこともないよ! どうせ手の内がわかってるから、兄弟で一緒にやってもつまんないでしょ? 緊張感なさすぎて。音楽ってやっぱ、「どうなるんだろう?」っていうドキドキな好奇心だからさ、兄弟でやったら、ああそうね、そうねってバレバレじゃん。面白くないよ。俺だって、メンバーは相当近場で集めたつもりだけど、それでもやっぱりシンクロナイズドスイミングやってるわけじゃないからさ、みんなで違う溺れ方してるような感じよ。足がつくかつかないかのところでね。
たぶんトモも同じようなこと言ってると思うけど、双子だからいつも比べられてきたしね、バンドはやってても同じことはやんないようにしよう、っていうのはお互い思ってたと思うよ。でもカステラもピーズも王道は行かないんだよね。わざとひねくれてさ、だから、あっちはドライで来たから、こっちはウエットで行こうかな、とか。だけどウエットのほうが楽だよね! チンチン出せばいいんだもん。ドライは出せないんだからね〜。かといって熱くなると普通のロックになってしまう。難しいよね。トモ、難しかっただろうなぁ。


人間、40歳までは大丈夫なんだよ でも40過ぎたら、もうたまるたまる!

年齢で何か目標決めるってことも、もうなくなっちゃったよね。最初はあったのかもしれないんだけど。ピーズだって10年やって売れないから辞めちゃったんだし。だけどまたノコノコ始めちゃってるしさ。俺もさっさと子供とか作ろうと思ってたのに、全然作ってねえしさ。30歳の若いお父さんお母さんで羨ましいわぁ〜とかね、ホントそう思ってたからね。けど、もううやむやになっちゃったねえ(笑)。毎日毎日がどんどん過ぎたね。いろんなことがありすぎる! 東京だからかもしんないけど。だけど、ここんとこまた1日1日が長いんだよね〜。体がしんどいんだ(笑)。なんか、あっという間ではなくなってきた(笑)。結構ツライよ。時間が長く感じる。これはまさに年のせい! なかなかもう体が軽くないよね。昔の写真とか見たらもう小鳥のようだもんね! 軽いよね〜、軽い軽い。体液が違うね。
人間はさ、40までは大丈夫なんだよ。でも40はすごくでかい! あれはきっとホルモンバランスが崩れる感じなんだよ。もうね、騙せなくなる。なんかため込むようになるんだろうなあ。抜けないんだよね、気分とか妄想とかが。だんだん許せなくなってくるんだよ。寿命を感じて、自分と向き合うようになっちゃう。で、40ぐらいまでは何でも忘れちゃお!忘れちゃお!で、次の日になっちゃうんだけど、40過ぎてからは忘れないほうが良くなってくる。もう時間がねえなって思ったら、うやむやにできなくなってきて。もう、たまるたまる! だから今はどうやって消化してやろうかって、気持ち悪くなってるんだよな。「で、結局俺はなんだったんだ?」みたいなさ。
これからは1コのことぐらいしかできないんだよね。そんなに何個も掛け持ちはできなくなるから。今までは自分のことなんか嫌いだ嫌いだって言ってれば済んだんだよ。自己嫌悪で逃げられたんだけど、もうせっかくだから自分のこと好きにならなきゃもったいないじゃねえかって思うようになってきてさ。そう思って改めて鏡とか見ると「だいっキライ!死んでるわっ!」って(笑)。まあ実際は鏡なんか見ないんだけど、言ってみればあえて鏡を見るような感じ。ここで鏡を見るのか〜!みたいな。でも見なきゃいけない時期に来てるんだよな。
何か違うことを始めてみようと思っても、確かにもうできないよね。バンドじゃ食えねえし(笑)なんか手に職がないと・・・・・と思って、バンドやめて調理師やってけどさ、やっぱ15歳くらいで料理始めてるヤツとは何もかも違うもんね。だから俺はバンドやるしかないんだなって思ったし。好きなことやって食ってる人って実はいないんだろうね。好きなことで食ってるように見えても、いろんなこと我慢してると思うよ。そうだなあ・・・・・これで食える食えないとかリアルに考えるのってやっぱあれじゃない? 好きな女が妊娠したときじゃねえの? そこでバンドやるかやらねえか決めるんじゃない? まあバンドじゃなくても、好きなことやれるかやれないか。キライな女が妊娠した場合? それはあんまり想像したくないなあ。やめておこう(笑)。

自分が大好きっていうのは変わらない だから生きてるんだと思うよ

結構バンドも楽じゃないよね。音楽は1曲1曲の積み重ねだし、お客さんがどう聴いてるかなんてわからないからね。それに絶対先のことまで計画なんてできないよ。今、20周年まであと3ヵ月なんだよ。でも、わかんないんだよ、20周年までやってるかどうか(笑)。おとといライヴ中に声でなくなったしさ。恐かった〜。大滝秀治になっちゃったんだもん(笑)。20周年がどうこうっていうより、The ピーズが40歳?うそー!って感じだよね。俺が若かったら40過ぎのオッサンたちのバンドなんか絶対観ない!(笑)。年齢聞いただけで見ないもん。で、なんかラジオから流れてきて、このメロディーかっこいいね〜ってなって、レコード買ってみてプロフィール見たら40歳?っていうことならあり得るけどさ。音楽とかバンドって、やっぱり若い人がやるべきだね。40過ぎとかだと、やっぱどっか壊れてないとできないよ(笑)。何かが壊れてるんだろうな、この人達は!って、そういう聴き方する、俺は。絶対、何か壊れてなきゃ嘘だよ。
ハタチの頃から変わったのは、人に好かれたいとかいう気持ちがどんどんなくなっていったところかな。上京したての頃はさ、もう動くものにはついて行っちゃうヒヨコみたいにさ、カワイイもんだったよね。誰からも好かれたいみたいなさ。そういうのは25歳くらいでやめちゃうじゃん。で、10年くらい好きなことをやっていって、いい加減身体もだんだん壊れてくると、そろそろ今までお世話になった人に何か恩返ししないとバチが当たるかなあとか(笑)そういうことを考え始める。けど、そういう気持ちはあるんだけど、結局アル中なんだよねえ。やめようと思ったんだけどな、酒も。無理!
俺、曲作るのは好きだからね、趣味っちゅうかね。だから、なるべくだったら人前で演奏したりとかは滅多にやりたくないんだよね。サスケのように覆面かぶってレコードだけ出してるみたいなね。人前でやるっていうのは、うまくいったら気持ちいいんだけど、失敗したら死にたくなるからなあ。今日は何10キロ走らされるんだろう?っていう部活の前みたいな気持ちよ。恐いよ〜。ホントに自信を持ってできたらいいんだけど、いつも「こんなんでいいのかな?」「いいのかな?」って思いながら生きてるんだろうな。自信持って!とか言ってたら、ホント外出られないもんね。ずーっと家の中でお化粧していて外に出られない女の子だよ。確かに、ビートルズだって満足いくレコーディングはしたことないとか言ってて、それでもそういう音楽がいろんな人の拠り所になってたりするわけだからね。もっと軽く考えててもいいんだろうけど、自分のウンコはいい匂いじゃないと困る!困るんだ!(笑)。みんなそうだと思うけど、自分が大好きっていうのはずっとかわらないんじゃないの? 結局自分が好きだから生きてるんだと思うよ。